白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

農民関連のスキルばっかり上げてたら何故か強くなった 第6話「農民と勇者になれない勇者」

魔族が登場したようです

 ロキに見事におびき出されてしまったアルとルリですが、何かロキはルリについてはアウトオブ眼中で魔王軍幹部やウロボロスを倒したアルの戦闘力に興味を持っている模様。アルの戦闘力がどの程度のものなのか、あわよくば利用できないかということを考えているのだろう。ルリはまだ未熟で勇者としての力を発揮していないので、いつでも瞬殺可能と判断したようです。

     
コミック原作が出ている模様

 再生能力を有しているらしいロキにアルは大苦戦。ルリは全く歯が立たないような状態だったが、どれだけやられても果敢に立ち向かうアルに勇気をもらって、ルリは内心にあるコンプレックスと「どうせ自分はダメ」という諦めの気持ちを捨てる。その結果、勇者の力を覚醒させてロキを見事に討ち果たすというお約束かつ綺麗な展開を持ってきてます。

 で、それだけだとアルの農民設定が皆目生きないので、にがりによって蛭の魔物を撃退したというネタを持ってきてます。まあなめくじを塩でやっつけるのと原理は同じです。何となく無理くり感が強い印象を受けますが。

 

 

ウケ狙いの帳尻合わせがいろいろと垣間見える

 ロキの位置づけとか強さのバランスとか、かなりガチャガチャしてきた感じがあります。なんせアルが魔王軍の幹部を瞬殺してしまったし、伝説クラスの邪竜まで倒してしまったから、いきなり主人公の強さがインフレーションしすぎていて、これだと話が成立しないのでここに来て無理くりに調整を入れてきたという印象です。

 これって、当初は長期継続の予定がなかったり、そこまで綿密な計画を立てていなかった作品を引っ張ろうとした場合に起こりがちなんですよね。特になろう系なんて、とにかく最初に目を惹かないと後が続かないから、設定を盛りすぎる。この作品の場合、売りはただの農民が実は無双というギャップだけだから、それを極端に描くために魔王軍の幹部を主人公が全く自覚しないままに瞬殺してしまうという「笑える」展開に持ってきた。

 のだが、これで作品完なら良いんだが、続きをつなごうとすると最初に設定した主人公の無双度が邪魔になるんだよな。私は以前から何度も言っているが「無双すぎる主人公なんて最大のストーリー破壊要因以外のなんでもない」。どんな障害を設定しても主人公様が無双の力でちゃっちゃと解決してしまったらストーリーの山を持って行きようがない。だからそれを解決しようとしたら、主人公が何らかの影響で突然に弱体化する(これは設定に無理がありすぎてまず失敗する)か、さらに強い相手が登場する(このパターンが多いが、結果として強さがインフレーションしてドラゴンボール化してしまって、ひたすら駄作への道へ)のほぼ二択になってしまう。この作品の場合、しらばっくれて主人公の力の限界に枠をはめ(ウロボロスに対して「今の自分なら勝てない」としたのがまさにそれ)、さらにしらばっくれてより強いキャラとしてロキを登場させた。しかし普通に考えて魔王軍の幹部を瞬殺できたアルが、ポッと現れた魔族のロキに苦戦するってバランスがおかしいんですよね。

 

 

なろう系の致命的な欠点です

 昔、同じようなジレンマに陥った作品として私がよく知っているのが「スレイヤーズ」。あの作品は元々応募小説で読み切りだったから、いきなり主人公が究極呪文で魔王を吹っ飛ばすラストにしたんだが、好評につき続きとなったら「魔王をいきなりぶっ飛ばせる主人公が苦戦するような敵を設定しようがない」というジレンマに陥って、かなり苦しい言い訳を付けつつ、魔王配下の一人のヘルマスターをラスボスにして話を組み立てていた。

 まあこの辺りは前から言っている「なろう系及びジャンプ系の致命的欠点」なんですよね。いきなりクライマックス、毎回クライマックスに持っていく必要から、長期を睨んだストーリー設計が出来なくて、無理くりを重ねた結果として最終的には必然的に作品が破綻するという。この作品も、最初のウケ狙いの一発ネタから普通のファンタジーに転換する必要性が出て来て、そこで四苦八苦しているという感じが強いです。その上に、アルの母親設定に垣間見えるような、ギャグ設定とシリアス設定のバランス及び関連って辺りでも破綻する危険性を抱えている。最初からすべてギャグで押しきれば楽だったんだが、それだと話を引っ張れないんですよね。

 

 

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