白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

白い砂のアクアトープ 第16話「傷だらけの君にエールを」

知夢が抱えていたいかにも「今時」な事情には驚いた

 うーん、今回は意表を突かれたな。知夢がワケありなのは前話で匂わせていたが、その事情が「シングルマザー」とは。これは全く私も想像もつかなかった(親の事情か彼氏がワケありかというところだと予想していた)。いやー、確かに今日的ではある。今って女性の婚期が二極化してきて20歳前後でのヤンママか、30才過ぎての晩婚(とかつては言われた)が増加してきているということは言われている。またいわゆるヤンママにシングルマザーが多いと言うことも。そういう社会情勢の激変には、やっぱりまだ私のような昭和親父は感覚がついていけないようで。

     
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 LGBTの関係でアニメ作品にオネエキャラが増えてきてますが、片親家庭というのも随分昔からさり気に増えてきています。少し例が古いですが、「平成のオバQ」などとも言われていた「ケロロ軍曹」なんかも母子家庭でしたし。ああいう結構家庭を表に出している作品でも片親設定ってのは、時代的にそういう家庭も普通になってきたんだなと当時は驚くこともありましたが。

 

 

しかしこれで知夢のキャラが一気に説明がついた

 で、知夢のどことなく攻撃的でツンケンした態度も、シングルマザーで孤立無援になりがちな中で頑張ってきた故の過剰防衛姿勢ってことが明らかになったわけです。しかも彼女の場合、一度それで失敗しているから「今度は絶対に失敗できない」という意識が強く、そのことが自然に回りに壁を作ることになっていたと。まあ仕事とシングルでの子育ては両立しにくいってことも以前から言われていることですからね。知夢も一応は母親のサポートは受けていたようですが、どうもそれも最低限だったようですからね。気をつけないとこういう家庭が母親が頑張りすぎた挙げ句に追い詰められて、虐待や心中などにつながりかねないってのも現代の社会問題の一つ。

 母親を社会的にサポートなんてことは言われてますが、確かに職場では難しいこともよく起こります。どうしてもフルで仕事をするってわけにいかなくなるので、若い女性なんかには「なぜあの人ばかり優遇される」と不満を抱く者も出るし。男からは「女は楽だよな」と見られるしと軋轢がよく起きる。特に私が聞くのは、「仕事のために結婚や家庭は諦めました」というタイプの一昔前のキャリアウーマンタイプの女性上司が「私はすべてを捨てて仕事に打ち込んできたのに、この人は中途半端な」と嫉妬や妬みも半分混ざった態度でネチネチと嫌がらせをしてくるという話。全く何も理解できない昭和を引きずる化石男上司に並んでパターンとして多いです。

 

 

そして当然のようにそれが周囲に影響を与える、上手いな展開が

 そういう知夢の隠された事情を知ってしまったことで、自分があまりに配慮していない態度だったってことをすぐに反省するのはくくるの素直なところ。だからといって、そこから自分も育児体験してみようと突っ走ってしまうという斜め上の行動も彼女らしいところではある。こういう態度って知夢から見れば「分かるんだけど暑苦しい」って感じになるんだろうな。くくるのことを悪い子とは見てないが、やっぱりこういう真っ直ぐさはまぶしくもあり、少々うざくもあるだろう(笑)。実際にくくるのようなタイプは「良い子なんだけど、扱いが難しい」となりがち(笑)。熱量が大きすぎるんだよな。

 とりあえずこれで今までガチガチに鎧で固めてきていた知夢の態度も変化するだろうし、くくると知夢の関係性も変化するだろうということが暗示されています。それにしても一番この作品で微妙そうだった知夢とくくるの関係の件を、こういう今時な状況も含めて一発で描いてきたか。ある意味で結構王道展開とは言えるんだが、キャラ設定とか結構練り込んであるな。こういう描写はやっぱり上手いわこの作品。スタッフが人間のことを知らなかったからこういう作品は作れない。

 まだまだ新登場キャラに一癖の強い奴がゴロゴロいるから、それを描いていたら話数は十分・・・ってよりもむしろ足らない。しかもその間にメインであるべきくくるのことが薄くなったら本末転倒だし、結構バランスが難しいってのが気にはなるが、まあその辺りは多分考えているだろうな。ここまで周到に設計してきてるんなら。まあウダウダ言わずにこれから先を見ていきたいです。

 

 

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