白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

Vivy-Fluorite Eye's Song- 第6話

悲しき非情の決断

 冴木博士の思惑はメタルフロートの管理AIにされてしまったグレイスを救うことだった。しかしそれは最早不可能な話。マツモトにそれが不可能であることを確認したヴィヴィは、非情の決断を下すことにという展開。

     
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 なかなかに切ない話です。正史では冴木博士とグレイスが結婚をし、そのことがAIに対する反感を和らげる結果となったので、マツモトとヴィヴィの使命は二人の結婚を阻止することだったのだが、例のサンライズ落下事故への介入の結果、大きく歴史が変わってしまっており、その影響で既に二人は引き裂かれてしまっていたという結果。それにしてもヴィヴィが介入するにつれて、彼女の妹分のシスターズのAIの中におけるポジションの重要性がドンドンと増していっている。そして結果として彼女は妹殺しを続けている形になる。

 

ヴィヴィの感情的進化は悲劇的な結末を予感させる

 ヴィヴィの中で感情的なものが段々と進化していっていることが現れているのが、グレイスの歌に関する下り。マツモトの「これを歌と感じるか」という冷酷な問いに、「音階に過ぎない」と答えるヴィヴィは、そこに感情の不在を感じていると言うことになる。AIを滅ぼすために行動しつつ、自身はAIとしてドンドンと進化し続けているヴィヴィは既にその存在自身が矛盾となりつつある。どうも最後の最後では彼女自身が自身の存在に決着をつける必要が現れるような気がする。

     
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 基本的に「人を幸せにする」ことを使命としているヴィヴィ(というか、この使命はディーヴァのものと言うべきか)としては、冴木の自殺はかなりの衝撃ではあるはず。以前から彼女は自分の使命に疑問を感じて揺らいでいるが、その揺らぎがさらに大きくなる可能性がある。しかしこういう葛藤って、そのものズバリの人間へ進化していっていることでもあるのだが。

 

テロリストやマツモトの行動が今ひとつ不明ではある

 で、またも絡んだあのテロリスト君ですが、これで彼女に命を助けられるのは3回目でしょうか。あからさまに異常すぎる因縁です。彼も今後話への絡みが深まってくるような気がする。そもそもあのテロリスト団体とヴィヴィ達は、方法論は全く異なるが、目指しているところは一緒なんですよね。だからこそ今回、マツモトはあっさりと共闘を提案したと。ただし彼らと共同戦線を張るということはあくまでしないところから見ると、彼らのやり方では事態は改善しないということをマツモトは知っているのでしょう(実際に正史では彼らのテロのせいでAI命名法が成立したわけだし)。あの組織、指揮中枢がどこにあるのか分からないのだが、行動が非常に短絡的なんですよね。

 もっともマツモトが行っている介入も、本当にAIの進化を止める方向に向かっているのかはいささか疑問。実はマツモトが口で言っている目的と、真の目的は違っている可能性もある。最初の議員の暗殺阻止は、結果として彼の活動のモチベーションを高めることにつながり、AIの地位向上に関する法律は成立したし、前回のサンライズ落下事故に関しては、冷血マツモトが何のためにあれを阻止したのかは未だに謎。第2話でモモカの乗った飛行機を救おうとしたヴィヴィの行動を実力で阻止するぐらいの冷血マツモトが、単に犠牲者を減らすことを考えるとも思えんし。どうも行動に整合性がないように感じられる。

 

見ていて精神的にキツい作品だが、作品はよく出来ている

 それしても毎度毎度のことながら、作品中で一貫しているのはこの「乾いた空気」。空気が乾いている分、ヒロインにとっては過酷な環境となっている。毎回毎回ある種のバッドエンドばかりだから、結構しんどい作品でもある。

 今回の内容、以前からこの作品はアクションシーンにおける激しい動きとかも売り物の一つであるのだが、それが見事に発揮され、なかなかに見応えのあるチェイスシーンになってました。こういう辺りの作品としての基本的な作りは非常に良く出来ている。

 

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