白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

86-エイティシックス- 第3話「死にたくない」

ヒロインと彼らとのズレが顕在化

 立場の違いによる考えのすれ違いという必然的な事態が発生しました。ヒロインは86と呼ばれて人間扱いされない彼らのことを尊重し、人間として接しているというつもりでいたのだが、それは彼らの側から見れば、所詮は世間を知らないお嬢様の自己満足の偽善に見える。とりあえず適当に話の調子を合わせてはいるが、本音の部分では信頼関係を築くのは非常に困難。まあ当然の軋轢ではあります。

     
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 どうしたって彼女は安全な場所から指示を飛ばしているだけで、彼らは実際に命を張っていて消耗品として明日をも知れぬ立場。あまりに立場が違いすぎるので「私は貴方たちのことを本気で考えているのです」と言われたところでお嬢の綺麗事なのは事実だわな。

 この問題を根本的に解決するには社会全体を変革しないといけない。そもそも彼らは人間ではなくて家畜だから有人兵器でなくて無人兵器だなんて言う見え見えの欺瞞が通っている異常な社会ですから。といっても、彼女にはそこまで力は当然ないし、実際のところはそこまでの問題意識があるかも疑問。

 

結局のところ世界の矛盾は放置のままでストーリーが終わる予感

 本来のストーリーのパターンから行けば、いずれはヒロインはその社会変革に本気で動き出すって展開になるもんだが、どうもこの作品はその方向にはいかないような気がする。どちらかと言えば、理不尽な環境下で極限状態の中で彼らはどう生き残るかというような方がメインでは。ブラック企業残酷物語みたいなもの。そもそも社会変革につなげるとしたら、あまりにも最初の世界設定自体が突飛すぎて、ハッキリ言ってこんな世界がそもそも成立しようがないだろうという根本のところをすっ飛ばしてるので。

   
昆虫のようなメカデザインとかには独自性はありますが

 実際に軍事力を持っている側が虐げられてるんだから、彼らがいつまでも甘んじてその支配を受けている理由がそもそも分からない。自分達で手を下さなかったとしても、意図的に無人兵器からの防御を怠って壁内の連中を敵兵器に虐殺させるなんて方法もあり得ますから。大抵はこういう無理な設定の場合、外の連中は致死性ウイルスでも仕込まれていて、定期的に中の連中からの処置を受けないと生きていけないとかの仕掛けを用意しているものだが、今のところそういうのも特に見えない。

 とりあえずキャラの描写や戦闘シーンのスピード感等のアニメとしての作りには全く問題は感じないのだが、目下のところ疑問が一杯なのはそもそもの世界設定について。とにかくどういうものを描きたいのかが今のところ全く見えない。その挙げ句に話の途中でぶち切られるのなら・・・。

 

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