白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

憂国のモリアーティ 第24話「最後の事件 第二幕」

とうとうすべての決着の時を迎える

 いよいよ終幕です。ウィリアムの計画が終演を迎える。

     
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 ウィリアムの計画は意図的にロンドンに放火をして、それに対しての対応の中で自然に庶民と貴族の間に協力関係が生じるように仕向ける。そして両者の心理的な垣根をまず取り払う。その一方でホームズは女王から貴族院の庶民院に対する優越を撤廃する密約を取り付けており、自然に貴族の権益を縮小させる方向に向かわせるということか。

 そしてすべての憎悪を自身に引きつけて、庶民と貴族の共通の敵たる犯罪卿は、正義の使者たるホームズの手によって葬られる。その結果、これまでの不正義はすべて犯罪卿のものとして消滅して、イギリスは新しい世界に向かう。

 ってとこのようだが、実際にはそんなにうまく行くのかな? まあそのための細工のために、他の仲間は残されたようであるが。まあ確かに各所で彼らが扇動したりしていたみたいだし。

 

ロンドン橋の上で「友」と叫ぶ

 ただホームズが本気で自分を友達として助けようとするのはウィリアムにとっては若干の計算違いがあったかもしれません。ホームズがウィリアムのことを友と断言した時、驚いたような表情の後に笑顔が出たというのがウィリアムの心情を物語っている。そして落下するウィリアムを追いかけて飛びこむホームズ。流石にこの時は「そこまでするか!」という驚きの表情が出てましたが。そしてウィリアムを空中で抱きながら「生きろ」と伝えるホームズ。うーん、あまりに美しすぎて危なすぎる(笑)。もう腐女子の失神しそうなシーンだわ。だけど実際にウィリアムとホームズの対決シーン、もう最初から緊迫感が漲る中でホームズの「生きろ!」というメッセージが強烈すぎて(お前はもののけ姫かよ!)、心を打ちますね。正直なところ見ていてウルッときました。この作品ではこういうのは初めて。

     
コミックは大人の事情でまだ続きそう

 ホームズの原作では二人は滝に落ちたことになっていますが、本作の場合はロンドンブリッジでした。恐らくラストシーンの手前で滝が映ったのは、原作に対するリスペクトという奴でしょう。で、案の定ですが、二人とも健在で、場合によって続きのエピソードが出ますよという含み(実際に原作は続いている模様)。もっとも一旦こうやってしまうと、続きはかなり作りにくい。まあコミックは知りませんが、アニメはここで綺麗にまとめとく方が正解でしょうね。何しろ各人のその後の身の振り方みたいなものまで登場させて綺麗に締めてますから。下手にこの後を続けると蛇足になってそもそも作品の評価まで落としかねない。コミックについては出版社の大人の事情があるんでしょうけど。

 

まあ綺麗にまとめたと思います

 結局は、アルバートが表での全責任を取る形で自首し、ルイスはマイクロフトの元でMI6を仕切ることになるか。ボンドはそのまんま情報部員になったようだし、後の連中は市井に紛れながら世の中を監視していくってことのようです。で、ワトソン君は原作通りにホームズの活躍を描いた小説を執筆し、ウィリアムの意図を尊重した上でモリアーティを稀代の大悪党に仕立て上げたと。うん、本当に綺麗にまとめたな。

 要するに革命家ウィリアムが、一身を捨ててイギリスの体制を革命するって物語でした。幼い頃の経験から貴族社会の変革を目指すウィリアムの静かで苛烈な性格が非常にインパクトのある作品です。だけどある意味でもっと苛烈なのは、自身も貴族でありながら貴族の立場に疑問を感じ、最終的にはウィリアムの計画に同調して自身の家族まで葬ったアルバートです。非常に温厚で思慮深い人物に見えますが、そういうタイプの方がぶち切れた時には何をしでかすか分からんという感じです(笑)。実際のところ、実は本作で一番闇が深い人物でしょう。ウィリアムは自身の手が血に染まっていることを感じていて、自らの命を捨てることで贖罪しようとしましたが、アルバートの方は自分の家族を皆殺しにしたことに罪の意識は全く感じていない様子なので。

 

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