白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

ミギとダリ 第13話「ミギとダリ」

綺麗なエピローグを付けてきました

 最終回というか、事件自体は前話でほぼ解決でエピローグ的な回になりますね。かなり綺麗にまとめてきました。

     
原作はコミックで「坂本ですが」の作者というのが何となく納得

 ダリが火事で顔に火傷の傷を負ったために入れ替わることが出来なくなり、ミギを表に出して自分はその影として生きていくと宣言する。しかしそんな状況に不満と寂しさを感じるミギ。自分は秘鳥としてではなくミギとして、そして兄のダリと2人で生きていきたいと願い始める。

 そして意外だったのは、園山夫妻が実は彼らが2人だということに気付いていたということ。それが2つのクリスマスプレゼントで現される。しかも夫妻は2人の性格の違いにも気付いていた。この辺りの下りはなかなかに泣かされるところです。あの夫妻、なんか天然ボケのように見えて実は2人のことをよく観察していた。それにしても通常は2人が入れ替わっているなんて発想にはならんところだが。性格がコロコロ変化していることに違和感は持っても「精神的に少々不安定な子だな」と思うぐらいで。

 

 

そして成長した面々

 で、家族4人で暮らし始めて数年後、2人はすっかりそれぞれの個性が出て来て、芸術家肌のミギと理知的なダリという特徴が分化している。それにしてもここで一番驚いたのは丸太の変貌だな(笑)。昔を思わせるのは相変わらず歯が齧歯目であることぐらいで、すっかり男前になっている(笑)。そしてさらに美人に成長した華怜と遠距離恋愛を完徹したのか。秋山は相変わらず雰囲気もそのままだが。

 そしてそこに出所した瑛二が戻ってきて、兄弟3人がようやく合流すると。こうやって並ぶと確かに瑛二は髪の色とかは違うが、顔立ちは2人と似てるんだよな。意図的にそういう設定をしたんだろうな。そしてやや緊張しながら戻ってきた瑛二を迎えたのはサリーちゃんと(笑)。ダリは自分は女装癖があるわけじゃないということを強く主張していたが、あまりに決まりすぎるだけに疑われても仕方ない。そして瑛二はやはり自分の母親は心理的にメトリーではなくて怜子であることを再確認すると。確かに彼女の思いはかなり屈折していたが、瑛二に対する愛情は本物だったようだから。そして瑛二もそんな彼女の期待に応えるべく全力で生きてきて、それが崩れたが故の綺麗に決着したいという想いからの凶行だからね。しかし「無様だが幸せな人生」と言い切れるようになったのが、一番の彼の成長です。

 

 

結局はダリとミギの精神的成長物語だった

 「証明したいことがある」と言った2人は、結局はバラバラの道を歩むことを決めると。ミギはそのまま残って芸術の道を歩む(?)のに対し、ダリは家を出て神学校(進学校?)に入ると。2人は1人でなくてそれぞれ別の人間であるが、離れていても心自体は繋がっているってことでしょうね。結局はこの作品全体を通じて、最初は完全に一心同体でほぼ個体識別がつかなかった2人が、作品を通じて個を確立していく過程も描いてるんだよな。実際に私も序盤は2人の区別が全くつかなかったが、中盤ぐらいから明確に性格の差が出てきて、ビジュアルにはほとんど差がないにも関わらず、行動で明確に2人の区別がつくようになったから。こういう辺りの描き方が非常に巧み。これには振り返ってみて驚かされたわ。

 もっとも結局最後まで「華怜はどういう素性で、実際にどこから来たの?」ということは全く説明なしのまま終わったな。それに限らず、本作をサスペンスやミステリーと捉えたらかなり無理のある部分が多々あるのだが、どちらか言えば本作はそっちが主眼じゃないからな(そもそもミステリーに幽霊が登場したらダメだから)。作品のテーマ自体は事件を経ての2人の関係性とかそっちの方だろう。独得のクールでシュールな雰囲気の中で、そっちの方はかなりキチンと描けていた。

 「A la memoire Sano Nami(佐野菜見を偲んで)」というフランス語のメッセージが一番最後に表示されるが、本作の放送直前に亡くなった原作者の佐野菜見氏に対する追悼ですね。確かに独得の希有な才能を感じさせるので、非常に惜しい人を亡くしたと思います。ただ本アニメはかなり出来の良い作品となっているので、十分に彼女に報いることが出来たと感じます。

 

 

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