イジメを乗り越えて成長していくヒロイン
学校内のイジメで不登校になってしまっていたヒロインのこころ。そんな彼女がある日、鏡を通して異世界と思われる謎の孤城に呼び出された。そこには彼女と同様に呼び出された少年少女たちが。それぞれに問題を抱えている7人は、狼様と名乗る狼のお面を付けた謎の少女から、願いを叶える小部屋を開けるための鍵を探すように言われる。
今時の中学生が抱えるいじめや孤立などの問題を取り上げた作品であるが、同時に残念ながらこのような問題は今に限らず昔から存在し、多分未来にもまだ存在するであろうことも語られている。当然のようにヒロインはこの孤城での体験を通して成長し、それを克服して歩き出すというお約束の綺麗な結末へとつながる。そのきっかけは彼女が憧れがあった転校生から、彼女が登校拒否になってから今度は代わりに自分がターゲットになったことを聞き、しかも彼女がそのことを「馬鹿らしい」とバッサリと切り捨てている強い気持ちを知ってのことである。イジメの被害者は往々にして自尊心が低下しがちになるものだが、彼女もイジメについて何らかの自分の責任も感じていたのだが、実は完全に相手の精神に一方的な問題があり、さらには自分が必ずしも孤立しているわけではないことを知ったことによる。
また自尊心の低下などから万事に対して行動することが出来なくなっていたヒロインは、最後の最後で皆を助けるために積極的に行動を取るに及ぶことになり、結局はこのことも彼女が自尊心を取り戻すことにつながったと考えられる。とは言うものの、あまりのあっさりの決着には、イジメの実際の被害者からしたら「そんなに単純な話ではない」と言いたくなりそうである。また本作では、ある意味でヒロインよりもさらにひどい精神の問題を抱えてそうな加害者側については放置である。
どうしても尺の関係で中途半端になった感は否定できない
当初からこの作品は呼び出された7人の理由、また孤城の意味などについて謎を伏せており、ストーリーが進行するにつれてそれが明かされていくという仕掛けになっている。また他の面々とはどうも状況が異なり違和感のあるリオンの存在などもカギとなっているのであるが、これらの謎の答えについては残念ながら予想の範囲であり、意表を突かれたというところは全くない。だから本作についてはそっちが主眼ではないということである。ヒロインを含めてのそれぞれの心の問題を正面に扱っている。ただし人数と尺の関係もあるので、結局はヒロイン以外のほとんどの人物を個別に切りこめるところまでは行っていない。
そのようなところもあり、ヒロインの成長物語としては綺麗にまとまっていて感動的でもあるのだが、根っことしてはかなり深刻なテーマであるにもかかわらず、その点に関しては最終的にはいささか浅めのファンタジーになってしまったという中途半端感はぬぐえないところがある。明らかにもう少し深く描くべき内容を尺の関係で切り詰めた部分が感じられた。主要登場人物が7人さらに物語の期間が1年という点を考えると、やはり単発の映画では描き切ることはしんどく、どちらかと言えば1クール連続のドラマかアニメの方が適していた内容のようには思われた。