白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

2021夏アニメ 日曜日編

 7月になって今年の夏アニメが始まりましたが、今回も例によってBS11を中心にその他を加えてチェックしていく予定です。とりあえず土曜日の晩に放送された作品を。さすがに土曜日となると作品数も多い。

 

魔法科高校の優等生 第1話「一生大事にします」

 人気作「魔法科高校の劣等生」の人気キャラであり、主人公の司馬達也の妹・司馬深雪を主人公に据えたスピンオフ作。

     
プライムビデオ配信中

 元作の方をそこそこ楽しんだ身としては、まあ本作の主旨は分かるのではあるが、深雪を主人公に据えたことで「お兄様、うふっ」という展開が増えてしまうのがツラいところ。今回の前半なんかはもろにそればかりで、正直なところ見ていて背筋がゾワッとしてツラかった。

 そういう要素が好きな者なら良いんだろうが、私のようにそもそも元作のそういう要素が一番苦手だった者(だからこそ、私的には「転スラ」とかの方が評価が高い)には、そこが強調されるというのがかなりしんどい。本作は深雪を中心に描いていくことで、元作では扱いがあまり十分とは言えなかったほのかや雫などのキャラを描いていくことになり、それが元作にもフィードバックされるのではという気もするのであるが、正直なところ元作に対する思い入れもそう強いとは言い難い私の場合、このゾワッにどこまで耐えられるかが問題。今回の後半のような要素が正面に出る作品なら大丈夫だが、前半の方がメインとなる作品(多分そうなるんだろう)なら早晩脱落する可能性も高い。

 

ぼくたちのリメイク 第1話「なにもかもダメになって」

 いわゆるよくある転生ものの1パターン。異世界に転生するタイプでなく、10年前に戻って人生をやり直しするというタイプ。

     
原作がある模様

 主人公は就職はしたものの運のなさもあって人生に行き詰まった感のある28才の男。芸大と普通科大学の両方に受かったのだが、芸大を諦めて普通科大学に進んだものの、卒業後にゲーム会社に入って失敗、その後思わぬコネで別のゲーム会社で働くことになったが、そこでもプロジェクト頓挫で完全に行き詰まった時に、好都合にも突然に大学選択の直前に戻ってしまうという超ご都合主義展開である。

 まあ行き詰まったそもそもの原因は、普通科大学に進学しながら、その後にやはり元々の趣味を諦めきれなかったのか、ゲーム業界なんかに進んじまったことであるので、そこで普通の会社を選んでいたらまた違うだろうなんて気もするのであるが、それはともかくとして、人生に満足していると言い難い者が誰でも持つ「あの時に別の道を選んでいたら」という妄想物語である。

 最初からシノアキが秋島シノだろうなんてことは見え見えだったが、他のプラチナ世代の連中もかなり身近に登場するんだろう。今後はそういう連中も絡めながら主人公の人生やり直し物語になる模様。本来はその後の10年の社会の展開を知っているということは、主人公にとっての決定的なアドバンテージになるが、作品的にはそっちの側面はあまり出さずに、業界人として業界の現実を知っているというアドバンテージの方をメインに出してくると思われる。なおいわゆるニート転生無双作品と違って、主人公がさり気に実は結構有能というのもポイント。

 ご都合主義の設定はともかくとして、人物は描けているし、作品としてはまず出来ている。ただこの手の作品は個人的に、もろに昔に「あの時あっちに進んでいたら」という人生の悔いを決定的に持っている私にとっては、まさに古傷をえぐるような話であるので、そういう点で見ていて個人的に非常に切ない(28才程度なら若者であるので、まだ取り返し可能なのだが、私のようにそのまま50を過ぎてしまったら、取り返しどころか完全に先が見えている)。異世界に転生して勇者様になるような作品なら、完全に現実と切り離して見られるのだが、社会の描写がリアルなだけに余計に刺さる。

 と言うわけで作品的にはまずまずという評価にもかかわらず、個人的な理由で落ちる可能性はあり。もっともまだしばらくは様子見である。

 ところでこの作品の舞台となっている芸大。私はそっち関係は全く知らないので判断しかねるのだが、明らかに明確なモデルになっている学校がある気がするのであるが。

 

かげきしょうじょ!! 第1話「桜舞い散る木の下で」

 「紅華歌劇団」(あからさまにモデルは宝塚歌劇団)を目指す「紅華歌劇音楽学校」に入学したヒロインを取り巻く人間模様を描く少女漫画作品。

     
プライムビデオ配信中

 白泉社のコミックの作品とのことで、いわゆるコテコテの少女漫画路線。ヒロインが元国民的アイドルグループ(明らかにAKB48をイメージしている)のメンバーだったが、男性恐怖症があってトラブルを起こしたことで卒業、男のいない世界を目指して歌劇団に入団したという曰く付きの少女と、大柄で身体能力だけは高い天然少女というダブルヒロイン構成の模様。周辺には三代続けて歌劇団入団のサラブレッドなど典型的コテコテの少女漫画鉄壁布陣である。

 正直なところ第1話を見ただけで大体起こりそうなことは想像が付くというようなタイプ。ここまでコテコテの少女漫画には興味は無いし、この手の話は個人的にはアニメを見るよりもコミックを読む方がしっくりくるので、本作については今回で脱落である。

 

現実主義勇者の王国再建記 第1話「まず勇者より始めよ」

 雨後の竹の子のように林立する異世界転生ものの一派。この手の作品はあまりに十把一絡げなだけに、各作品共にどのような個性を出すかに苦心しているが、本作の主人公は特にチート能力は持っていないが、地方公務員辺りを手堅く目指していたので財務政務等にそこそこの能力を持っているという設定。やっぱりこのジャンルも当初の頃のような読者層の妄想を反映してのヒキニート転生では、転生後の主人公の扱いに流石に限界がきたか。そもそも当初は主人公がヒキニート設定だったとしても、実際には実は本人のスペックが意外と高い設定にしないと話が動かないというジレンマに直面している作品は少なくない模様(リゼロのスバルなんかも、ヒキニートとは思えない対人交渉スキルを最近示している)

   
原作小説があるようです

 で、強引に召喚された主人公が、魔王軍の侵攻に追い詰められている世界の中で、魔王討伐・・・なんてことは一般人にはできるわけもなく、とりあえずは魔王軍と前線で戦っている帝国に軍事費をたかられている弱小国を取り仕切って経済建て直しをすることに迫られたという政治物語。物語の最終局面では魔王軍とどう対峙するかと大目標が垣間見えているが、どうせアニメはそこまでは行かないだろうから、むしろ当面の一番の敵は帝国であることになる。

 まあ主人公の能力値を高めに設定してはいるが、現実にはいくらマキャヴェリの「君主論」なんかを勉強していても、まだ就職もしておらず実務の経験もない学生が、まがいなりにも一国の差配をすべて出来るのかという根本的問題はあるものの、そういうところはこの手の作品に不可欠の「ご都合主義」ということで片付けられている模様。

 剣を振るってモンスター倒すだけが勇者でなく、こういう文化系勇者もいても良いんではという一つの提案なんだろう。主人公がいわゆる厨二全開タイプでない分、見ていて妙な安心感があったりするし違和感も少ない。まあ転生ものの一つの亜流としてしばらくは様子を見る模様。主人公が執務室に籠もっているだけだと話を動かしにくくなるだろうから、そこをどう動かすのか辺りが注目ポイントか。作者が緻密な政略を描けるだけのスキルがあるという気もしないので、そちらで破綻が来ないかが一番の不安ポイント。

 

 以上、日曜日作品はさすがに数が多かったが、少女漫画バリバリの「かげきしょうじょ」はいきなり脱落。後はしばし様子見であるが「魔法科高校の優等生」と「ぼくたちのリメイク」に関しては作品レベル云々よりも、作品の方向性が私の指向的に大丈夫かが今後の一番のポイント。「現実主義勇者」については、よほどの作品破綻がない限り、ウダウダ言いながらも最後まで付き合うのではという予感がする。