白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

進撃の巨人 第33巻

次巻が最終刊になることからまとめに入ってきました

 かなり長く続いていた作品だが、今年の4月で正式に終了することがアナウンスされたことから、次巻で完結するものと予想される。どうも外の世界の話が出て来てから、大人の事情でグダグダと話が引き伸ばされて失速した感がかなりあるが、ようやく大詰めになってきたというところ。

     
第33巻発売中

 

エレンの葛藤と残酷な結論

 話はいきなりエレンの独白から始まる。ここで描かれるのはエレンの苦悩。エレンが突然に無慈悲で冷酷な人間になったかのように感じられていたが、実はエレンにもこれだけの大量虐殺をすることには躊躇いも悲しみもあるということが表現されている。しかしそれでもエレンはあえて島の人々を救うために世界を地ならしするという過酷な選択をしたことになる。

 エレンは「壁の外で人類が生きていると知って、オレはガッカリした」と語っているが、ここにエレンの気持ちが現れている。かつての壁の中に閉じ込められていたエレンは、自分達の敵は巨人であって巨人さえ殲滅したら広い世界に出ることが出来ると考えていた。しかし実際は世界の外には人類がいて、しかもそれらの人類がすべて自分達を敵視しているということを分かってしまったのである。結局は壁の外には出たものの、島の中に閉じ込められるしかない運命であったことを分かってしまったわけで、それが「ガッカリした」ということだろう。だからエレンが子供の頃に憧れていた自由な世界を手に入れるには外の人類を殲滅するしかないという非情な選択になってしまうわけである。だからエレンの世界を地ならしするという選択は、島の人々を守るというだけでなく、幼い頃からの憧れを実現するというニュアンスも含んでいる。その根底が無邪気であるからこそ、余計に残酷でもある。

 

エレンと訣別を余儀なくされる一行だが

 一行は飛行艇でエレンが向かうと推測される飛行船の基地に向かうが、ここでアニは離脱。ミカサとのやりとりでアニが知らない間にアルミンとそういう関係になっているのを感じたミカサが心底驚いているのは少し笑えるが、アニの行動をミカサの目から見てたら想像外だろうな。一応は二人の関係は今まで伏線は何度も張られていたけど。

 で飛行艇が出航するという直前に不屈のお邪魔虫フロックが登場して余計なことを。結局は時間稼ぎのためにハンジが自ら命を捨てて巨人たちを足止めすることに。リヴァイとの別れのシーンがいかにもつきあいの長い二人という感じが漂っている。ここで見せたリヴァイの目が今までに見せたことのないような悲しみを秘めているのも注目だろう。ハンジは最後にエルヴィン以下先に死んだ仲間たちとの再会。まあこれは重要人物だけに救いを持たせているんだろう。問答無用で唐突に撃ち殺されたサシャなんかに比べたら随分と良い扱いである。

 そして飛行艇の中で一行はエレンと始祖のいた空間で再会。知らない間にエレンはこんなこともコントロールできるようになっていたようです。エレンを説得しようとするミカサにアルミンだが、エレンの返答は「オレを止めたかったらオレを殺せ」というもの。ライナーが言っているように、エレンにも実は誰かが止められるなら止めて欲しいという意志はあるのかもしれない。

 

で、最終的には全員が揃うんでしょうか?

 一方の精神的に疲れて逃げ出してしまったアニは、ここに来て後悔に苦しんでいる模様。ああ見えて根は良い子という典型的なツンデレキャラです。また戦闘意欲は満々にも関わらず強引に船に乗せられたガビとファルコのお子様カップルは急に「僕、空を飛べる気がするんだ」と言い始めた。女形の巨人は他の巨人の一部を取り入れることでその能力を発現させられるなんて新しいギミックがここに来て急に登場している。これって、翼をはやしたファルコとアニがお助けキャラとしてアルミン達の元に飛んでいくという展開か。もしかして一番美味しいところをお子様連中がさらっていくことになるのか? まあそれにしても最初はトランプ支持者なみに差別主義に凝り固まったお馬鹿キャラだったガビが、やけに成長したことで。ある意味で、本作中で一番成長したキャラかもしれない。

 で、驚いたのはどうやらライナー達の家族は実は鉄道で逃げ出していたらしいこと。これって今後にどう関わっていくのかは分からない。単に再会できて目出度し目出度しだったら、いささかご都合主義な感じはする。

 彼らは飛行船の基地を目指していたのだが、残念ながら到着時には飛行船は既に離陸済みで、しかも巨人に最後の攻撃を挑むが見事に返り討ち。昔から巨大怪獣に対しては航空兵器は叩き落とされるためにだけにあるという法則があるが、見事にそれを実践してしまった。

 そしていよいよ人類が終わりかというところでアルミン率いる調査兵団+αが到着というところで次巻へ。まあ最後に向けてなかなかに見せ場は作ったと思います。