白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

神様になった日 第12話「きみが選ぶ日」

美しく感動的なエンドではあるのだが・・・

 うーん、感動的で美しい結論にまとめましたが、正直なところ結局は綺麗事でまとめてしまったなという感も否定できないな。

 陽太の必死さが通じたのか、ひなが陽太に反応して・・・って展開は、ご都合主義的ではあるがまあ作品としては破綻ってわけじゃない。ただ見てると、ここでそれまであからさまに重度自閉症って感じだったひなが劇的に回復したというか、いきなり軽度自閉症レベルぐらいにまで一気に変化している。この辺りは明確にご都合主義。まあこのレベルまで持ってこないと、陽太がこれからひなと一緒に暮らしていくという美しい結論に出来ないからだろうけど。陽太の呼びかけに対してひなは目でかすかに反応する程度というレベルだったら、どうしてもこの後の話が美しくならないし、その状態で連れて帰ったとなると実際に陽太がこれからの人生どうするの?って疑問の方ばかりが前に出ちゃいますからね。

     
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 現実にはあのレベルの病人を一人抱え込むって簡単なことではないです。陽太は多分そっち関係の大学に進むことを決意したんだろうけど、その大学に行っている間はひなは誰が面倒見てるの?なんて具体的な話もあるし。最初は妹や元気なご両親がフォローしてくれるだろうけど、妹はやがて「結婚して家を出るか、それともひなの面倒を見るために結婚を諦めるか」ってシビアな選択に直面することになるし、ご両親もだんだんと年を取ってついにはご両親自体が介護が必要な状態になる。こうなっていくと暗い未来しかないんですよね。それから急に施設とかに頼ろうとしても「空きがありません」とか「現在あなたが面倒を見られているのなら、その状態で良いんじゃないですか」とか言われる羽目になる。それとあの状態になったら、現実ではいずれそう遠くない将来に伊座並さんは陽太の元を去ることになる。結局はすべてを抱え込んでにっちもさっちも行かなくなった陽太は、全てを放り出して逃げ出すか、ひなの首筋に手をかけて・・・なんていうえげつない展開になりかねない。だけど現実にはそういう話があちこちにゴロゴロしている。

 

 正直なところ、そういうシビアな現実にはあえて触れずに、綺麗事でまとめてしまったというやや残念感はある。まあそんなシビアすぎる現実を出してしまったら、とても正視できない話になってしまうのは分かるけど。以前にチラッとだけ、実の父親が家庭崩壊してしまって逃げ出したということを描いてましたが、それはあの父親が特別に情が薄いとか無責任というわけでなく、現実はそうなる可能性の方がはるかに高いということ。結局はその辺りを「愛さえあればすべての障害は乗り越えることが出来る」という綺麗事だけの世界で解決してしまったという印象がどうしても否定できない。

 まあ私だったらこの話は、世界の終わりの日にひなの量子コンピュータが停止して、それと共にひなの命も終わるという悲しくて無難な結論にして、こういう問題からは逃げますね。ハッキリ言って現実はかなり残酷なので、それを正面から取り上げたとしたら作品としてまとめきれるとは思えない。

 

前話はこちら

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