良い意味での割り切りの良い作品
天帝エルメシアの誘いで、休暇とばかりにリゾート島に押しかけたリムル一行。しかしその先で水龍を祀る海底国家「カイエン」の地上制覇の野望に巻き込まれてしまう・・・という大活劇である。
驚くのはこの作品が完全にゴブタを主人公に据えているということ。このシリーズでのゴブタはコメディリリーフとして主要キャラの一角に入るが、いろいろな点で立ち位置が微妙(四天王最弱のその戦闘力といい、スペックも存在感も非常に微妙)なキャラであったために、こういう番外編エピソードの主役に据えるというのはある種、大胆ではある。しかもこの手の劇場作品のお約束として一応主要キャラを総出演はさせているが、彼らはせいぜい見せ場が一場面あるかないかの完全背景扱いといういさぎの良さ。それどころか本来は主人公であるはずのリムルでさえ、明らかに脇役レベルの扱いとなっている。
本作では主要キャラたちを背景にして、ゴブタと水龍の巫女であるユラとの出会い、さらには冒険、そしてその恋愛劇の結末までをテンポよく一大冒険活劇として描いている。
ストーリー的にはひねりはほとんどないシンプルなもの
ストーリーは極めて単純で、昔から定番と言える「ボーイミーツガール」タイプのストーリーであり、話の主題は「少女を助ける」というだけのお約束ガチガチの超ド定番タイプストーリーである。開始数分でその後のストーリーのほとんどが予測できるものであり、それだけにストーリー的には失敗する余地がない超無難作という側面はある。
ただそうであれば当然ながら作品として退屈させないためには見せ方が重要となる。その点では本作はテンポも良く、小気味よいアクションなど見せ方の面では上手くまとめている。終盤クライマックスでの戦闘シーンはさすがにゴチャゴチャしすぎてやかましいだけで状況が分かりにくい部分もあったが、まあパワーで押し切ったとはいえる。中盤のゴブタを中心とした軽妙なアクションなどはまずまず合格点であると言って良い。
また一番重要であるキャラの描写に関しても、ゴブタのキャラを今回のエピソードで深めることには成功している。お調子者で考えが浅いように思われるが、その根っこは善良であって困っている者は見捨てられないというお人よしであるというゴブタのキャラクターがなかなかリアルに生きている。またゴブタがユラに惹かれていく過程も、まあパターン通りではあるがそれだけに無理がない。
番外編としては十二分な出来
本作は本シリーズから離れた番外編ということから、どうしてもストーリー的に制約を受ける。例えば主要キャラの脱落・追加などはご法度だし、勝手に大幅に解釈を変えてしまっても本シリーズの方に差しさわりが出る。そういうことからストーリー最初からゴブタの恋愛劇は悲劇的結末になることは確定していたわけであるが、それを一抹の切なさはあるものの、決して暗い救いのない話にはしなかったことは、ゴブタのキャラを考えても正解である。本作を見ていると、ゴブタの考えの浅さのようなものも、良い意味での前向きでポジティブというようにも思えるようになっている。
描写がほぼゴブタだけになってしまっているので、他のキャラのファンとしてはいささか寂しい感じもしないではない作品のように思えるが(特にベニマルやソウエイとかのファンは)、ストーリー作成上は極めて妥当な判断でこの割り切りの良さは正解であると言えるだろう。流石にリムルの存在感まであまりに軽くなっているのは賛否もあるかもしれないが。
つまりは設定は大胆であるが、内容的には無難で手堅くまとめていたというところである。一応作品の説明的なセリフは最初にあったが、もとより本作のことを知らない者は対象外と言っても良い作品であり、あらゆる点で良い意味で割り切っているということになる。