白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

杖と剣のウィストリア 第16話「そして始まる物語」

 ここのところ、本業の忙しさから来る時間不足と体調の悪さなどから各話個別の感想は書いていなかったのだが、GWをほとんど寝て過ごしたことによる体調の回復と、本業からしばし解放されての時間的余裕が生じたところ。そしてそこになによりも久々に「書こうというモチベーション」を持たせる作品が登場したので、例外的に今回はコメントを書く。

 

 

そもそもはあまり高評価の作品ではなかったのだが・・・

 本作は第一期が2024年度の夏アニメとして放送されており、今期が1年半ぶりぐらいの第二期登場となる。ちなみに第一期の私の評価はCであり、そう高いものではない。

anime.ksagi.work

 というのは、基本的に落ちこぼれが才能を開花させつつのし上がるというパターンはあまりにお約束であって独自性が薄いのと、私が重視するキャラクターの行動原理に対する整合性などの点では、主人公キャラの行動にどうも行き当たりばったりなところが見えたことなどから来ている。また作品が完全に途中で中断なのは評価的には厳しい。もっともあの頃から、キャラの動きの良さとか戦闘シーンのパワーなどは魅力と感じてはいたところはあるのだが、私の評価基準ではその辺りの評価は小さくなる(ただしこういう高評価点もあったので、今期に目を通しているのだが)。

 そして今期。第一期の終盤辺りから匂わせていた背後の巨大な陰謀の影がいよいよ正面化し、以前のどことなくノホホンとした学園もの雰囲気が一掃されるというシビアな展開に急変したのにまずは驚かされた。

 その戦いがまたも絶望的な状況で始まる。魔法の通じないモンスターも含む敵の攻撃に防衛側に回る学園の教師や生徒たちは追い詰められていく。ここで剣によって戦う主人公の重要性が脚光を浴びるという形になるが、その主人公もそれを凌ぐ圧倒的な実力を持つ敵の前に倒れ、自身の無力さを噛みしめることになる。しかしそこで新たな覚醒につながるという展開。

 もうこう概略で書いてしまうと陳腐でご都合主義そのものの展開で、あまり上質なストーリーとは言い難いので、いわゆる通常の私の判断基準では今回の一連の話は低評価になるべきところである。しかし今回私を驚かせたのは、そういう理屈を超える作品のパワーである。一言で括ってしまえば今回の内容は「演出の勝利」と言える。

 

 

ご都合主義、ありきたりを吹っ飛ばす画面のパワー

 絶望のどん底にいた主人公が再び立ち上がり、そこで新たな力に覚醒する流れは陳腐ではありながらも非常に格好の良いものを感じさせ、またそこで垣間見させられるのがこの理不尽な世界の真実。今まで無能者として虐げられていた彼こそが、実はこの世界を助ける鍵であるのではという大逆転である(これ自体はありがちのご都合主義なんだが)。

 このありがちでご都合主義の内容を、本作では徹底的なパワーとテンポの良さで披露した。あの緊迫感のある戦闘シーンはアニメでこその表現である。この緊迫感とテンポの良さは、最近では既に伝説化しつつあるフリーレンの「神技のレヴォルテ」にも匹敵するものがある。

 またここに仕込まれているのがいわゆる大逆転の構図である。それまで主人公を無能者として嘲り馬鹿にしていた連中が、その熱い戦いを見て必死で心からの声援を飛ばす。虐げられていた主人公が初めて認められた瞬間となる。この大逆転は今まで散々苦労してきた主人公を見てきた視聴者としても胸が熱くなるところ。

 そしてそのまま押し切るかと思っていたところでの、まさかの剣の破損。「どうなるんだ」と思わせたところで、主人公が塔を目指した原因となっていたヒロインからの援助による二段覚醒。最初のテンポで最後まで押し切るのでなく、ここで変化と「間」を入れる絶妙さ。そして彼女と一体になりつつまさに無双の力で、魔法が効かない相手であるはずという理論をぶち壊して、最強の敵をなぎ倒す展開にはまさにカタルシスを感じさせるもの。

 

 

今後に注目せざるをないところだ

 正直なところ、陳腐、ありがち、ご都合主義という論理的で否定的な言葉は、画面から漲るパワーで吹っ飛ばされてしまった。一応理論派のつもりである私にとって、これは非常に都合の悪い状態である。正直、久々に胸が熱くなってしまったのだから・・・。

 今回のタイトルは「そして始まる物語」となっているが、要は今までの話は序章であって、これからが本番だというのだろう。どうしてもそれに期待させるところがある。さて本作がこの後もこのテンションを保てるなら大化けの可能性は出てくるが、この後再びダラダラしたご都合主義展開に落ちるなら、今回は一回こっきりのまぐれ的な成功回に終わってしまう。その辺り、今後に注目である。