今日はダブルヘッダーで映画を2本見に行ってきた。まずは午前中に見た作品の方を。こちらは有名なシリーズのオリジナル劇場版ストーリーとのこと。なお内容的にはネタバレも含むので注意。
劇場版転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編
いろいろ制約のかかるところを無難にクリアしたシナリオ
なかなか良く出来た映画だというのが一番の感想である。今回はオリジナルシナリオとのことだが、この作品の場合はシナリオ設定上の制約が非常に多い。まずファンを納得させるためには、かなり過剰になっているキャラクターのそれぞれにそれなりに見せ場を作る必要があること。また各キャラについて「こんなのあのキャラじゃない」と言わせてしまうと終わりである。
しかも主人公はかなり無双というシナリオ立て上のかなりの障害がある。また連続作品の制約として、本作で登場した新設定が後の本編と不整合を起こすようなことがあってもいけない。それらの条件をクリアした上で1本の作品として面白みを出す必要があるのだから、まずはシナリオ設定が非常に大変だったことは想像に難くないのであるが、これらの問題を極めて無難に解決して、単編映画として十二分に楽しめる内容にしてあるのが一番のポイントである。
キャラの描き方については文句なしでなかなか巧み
まずリムルファミリーはほぼ総出演で、濃淡はあるものの一応皆それなりの見せ場は作っているし、キャラの描き方も無理がない。例えばゲルドにヒイロが斬りかかったシーン、最初は切り結んでいたゲルドがヒイロがオーガであって、村を滅ぼしたオークに対しての復讐心に駆られていると気付いた時、あえて戦うことを止めてヒイロに斬られようとしていたところなど、過去の自分達の行動に対して深く後悔をしている無口で真面目な男であるゲルドらしい行動である。流石に各キャラの性格が完全に確立しており、明らかに「これは変だ」という行動を取るキャラは皆無である。
また無双のリムルがすべてをチャッチャと片付けてしまったらストーリーが崩壊するが、その点については自然に制約を加えながら、仲間みんなが協力して困難に立ち向かうという形で描いており、またリムル自身のキャラクターの描き方なども実に魅力的に描いている。その上で新キャラであるヒイロとトワについて、なかなか濃密にキャラが描けており、その点では全く不満がない。
本作ではベニマルの兄貴分でオークの生き残りであるヒイロを中心に話が転がるのであるが、ヒイロの感じた無念、さらにはベニマルとの交流、トワに対する愛情、全てがまあお約束パターンとは言えなくもないが、無理なく説得力のある形で描かれていて観客に対しても共感を呼びやすい。また概して存在感が薄くなる危険性のあるタイプのトワもヒロインとして十二分に立っている。
商業的計算も見えるが、作品としては後味も良く成功している
ヒイロとの絡みで必然的にベニマルがサブ主人公に近いレベルの扱いになるのであるが、この辺りは明らかに人気の高いキャラを重視してのファンサービス的要素も上手く取り込んでいると言える。総じて商業主義的に非常に計算されて設計された作品であることも分かるのであるが、それがあまり露骨に表に出すぎないようには配慮されている。
まあストーリーとしてはそれほど深いものではなく、内容的にもバトル的なものが中心ではあるのであるが、無理にひねりすぎていないスピーディーなストーリー展開で爽快感を重視しているのは今時のエンターティーメントとしては正解である。実際に終わってみたら「ああ、なかなか面白いものを見たな」という印象が残る。