白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

2023年冬アニメ作品評価

 2023年の冬アニメについての作品評価の点数を発表します。なお2クール連続作品の場合は、最終回が含まれるシーズンに評価することにします。ちなみに今期は各作品のフォローが途中で中断されてしまったので、私がこのブログ止めてしまったのではないかと思っている方も多かった?かと思いますが、実際は止めたわけではなく、アニメに嫌気がさして遠ざかったわけでもありません。本業の方が洒落にならないぐらい切迫してきたので、そちらに時間を取られてアニメ視聴が後でまとめてという状況が増え、毎週フォローが出来なくなったからというのが事情です。と言うわけで実は大抵の作品は一応フォローはしてましたので、期末にこういう形でまとめて評価します。

 評価についてはまず総合評価はA~Dの4段階でAが最上でDが最低となります。各項目は「キャラの魅力」というのはいわゆるキャラ萌えとかいうのではなく、キャラがリアリティや魅力を持ってキチンと描かれているかということ。「ストーリー性」はそのものズバリの盛り上がる興味を持てるストーリー展開となっているか。「納得性」というのは話の設定に無理があったり、ストーリー展開が無茶だったり、演出がひどかったり、そもそも作品が完結しなかったりなど、納得しにくい難点を抱えていないかというものになり、各項目3段階で評価しています。

 なおブログの方では途中脱落で扱いをやめたが、実はその後も作品自体は不定期にチェックしていた(空いた時に暇つぶし的にまとめ見などをしていた)という形で最後まで目を通している作品とか、実は最初から見てはいたんだがブログで扱う気がしなかった(コメントとして書くようなことがない)とか、さらには「途中で脱落必死」と考えて最初から扱わなかったのに、結果として最後までダラダラ見てしまったなんて作品も加えている。

 

 

解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ

総合評価 C
キャラの魅力☆☆ ストーリー性☆☆ 納得性☆

 ド定番中のド定番であるリストラ系。30代という言葉をオッサンの象徴として使っているのは、30代と言えばまだ若造という感覚のある私にはシックリこないところ(笑)。思いの外毒気の少ない内容は楽しくはあるが浅さを感じる。総じて可もなく不可もなく、ただし独自性は皆無という印象。

 

ダンジョンに出会いを求めるのは違っているだろうか

総合評価 B
キャラの魅力☆☆☆ ストーリー性☆ 納得性☆☆

 ザックリと内容を要約すれば「こうして孤高のリューさんはオラリオの種ウサギことベル・クラネルにコケました」というだけの話。これまで不可解だったリューの過去から彼女の性格にまでかなり深く斬り込んでいるが、その分全体の話の動きが皆無に等しくなって、同じような展開の繰り返しになったのが見ていてしんどい。まあ実際は今期のみでこの作品を評価するべきではなく、このような話を入れれるのは長期シリーズの強味でもありはするが。

 

Buddy Daddies

総合評価 B
キャラの魅力☆☆☆ ストーリー性☆☆ 納得性☆

 殺し屋二人が少女を拾ってしまったことで父性に目覚めていくという、昔から比較的よくあるタイプのストーリー。内容的には新しさを感じないが、ある意味で鉄板展開なのでかなり無難にまとめた作品。一番重要な各キャラクターについてよく描けており、マズマズの内容である。

 

とんでもスキルで異世界放浪メシ

総合評価 C
キャラの魅力☆☆ ストーリー性☆ 納得性☆☆

 一見使えないハズレスキルで実は無双してしまうという、これも最近の流行パターンのお約束の一つ。ストーリー自体はご都合主義展開の集大成で特別に面白味は薄いがその分破綻もない。しかし実際のところは本作が一番無双していたのは、スポンサーとのタイアップ。露骨にスポンサーのCMを作品中に加えられるのでは、営業面でのエポックメイキングかもしれないが、今後のこの手の作品が増えたらそれは嫌だ。

 

 

The Legend of Heroes 閃の軌跡 Northern War

総合評価 C
キャラの魅力☆☆ ストーリー性☆ 納得性☆

 ゲームの設定をそのまま持ってきて、その外伝的位置づけのエピソードを持ってきたと思われる作品。ゲーム原作にありがちの説明不足で唐突な展開に、結局は決着が明確にはつかないという弊害はそのまま現れているが、まだそれでも一応はヒロインの成長と周辺キャラとの関わりがあり、ゲーム原作にしたら比較的マシな方。

 

REVENGER

総合評価 C
キャラの魅力☆☆ ストーリー性☆☆ 納得性☆

 仕事人アクションだけで最後まで通したらしんどいところだったが、一応最後に大きな陰謀という一山を持ってきていたので、作品としてはそれなりにまとまった。と言うものの、取り立てて大きな魅力なく、終わってみたら何を描きたかったのかいささか不明。

 

英雄王、武を極めるために転生す

総合評価 C
キャラの魅力☆☆ ストーリー性☆ 納得性☆

 ド定番の転生ものだが、現代社会からファンタジー世界へではなく、ファンタジー世界からファンタジー世界へで、転生したのは元々無双だった人物。オッサンが美少女に転生というドタバタをメインに据えるのかと思っていたが、終わってみたら転生設定はヒロインが最初から無双すぎる理由の言い訳のためで、ほとんど必要なかった。それをはぎ取ったら、結局は単なる美少女剣士もの。楽しさはあったが、特別な面白味は皆無。

 

転生王女と天才令嬢の魔法革命

総合評価 C
キャラの魅力☆☆ ストーリー性☆ 納得性☆

 ヒロインの突き抜けた性格と行動原理で、序盤は勢いがあってまずまず期待したのだが、中盤以降ひたすら百合展開が前面に出てきて急激に失速した。またタイトルにもあるようにヒロインに転生設定があったはずなのだが、終わってみるとそれが全く何の意味もなしていなかった。肩透かし度では今期No1。

 

 

人間不信の冒険者たちが世界を救うようです

総合評価 D
キャラの魅力☆ ストーリー性☆ 納得性☆

 基本はごく普通のファンタジーものなのだが、各キャラがそれぞれ暗い過去を持っているというのが特徴。とは言うものの、それが作品上で意味をなして生きていたかは極めて疑問。時折入る各人の過去を絡めた心理劇は、ストーリー全体のテンポを悪くするだけで大してキャラを深めることに役立っていない上に本編と水と油。結局はおかげで本編の進行が極めて遅くなっただけで、ファンタジーとして成功とはほど遠い。

 

老後に備えて異世界で8万枚の金貨を貯めます

総合評価 C
キャラの魅力☆ ストーリー性☆☆ 納得性☆

 ヒロインのいかにも現代っ子的なしっかりした性格は楽しいが、ストーリー自体はあまりにご都合主義が強すぎて雑。一応は単なる金儲け物語だけでなく、終盤に山場を持ってくるなど計算されているのは感じたが、強すぎるご都合主義は盛り上がりに水を差していた感が無きにしも非ず。結局は有象無象の類似作品群に埋もれてしまった。

 

異世界のんびり農家

総合評価 D
キャラの魅力☆ ストーリー性☆ 納得性☆

 いわゆる辺境のんびり系で、主人公にとってあまりに都合の良すぎるストーリー展開、全く何の問題も起こらない順風満帆ストーリー、おかげで山も何もない平板ストーリーなので退屈極まりない。精神が疲れ切った時の環境ビデオのような作品。

 

便利屋斎藤さん、異世界に行く

総合評価 B
キャラの魅力☆☆ ストーリー性☆☆ 納得性☆☆

 ショートストーリーの連作のような形で、多くのキャラの物語をオムニバス的に描いたのが最大の特徴。1本のストーリーを多方面から見せるマルチアングル的な構成によって、通常とは違うドラマを描いたのは興味深いところ。ただこの手の描き方は話の核が不明確になって散漫になりがちだが、一応は斎藤を核に据えることでそれを防いだ。シリアスとギャグがほどよく入り交じった構成も特徴的。

 

 

アルスの巨獣

総合評価 B
キャラの魅力☆☆ ストーリー性☆☆☆ 納得性☆

 キャラ達の行動原理もそれなりに描けていて、冒険活劇としては過不足なくまとまっていた。ただ一番最後の「俺たちの戦いはまだこれからだ」展開はあまりに蛇足過ぎて作品の評価を一段階下げることになってしまっている。また大ボスかと思われた奴があまりにあっさりと終盤に退場してしまったりなど、微妙な肩透かしがいささか気になるところ。

 

HIGH CARD

総合評価 B
キャラの魅力☆☆ ストーリー性☆☆ 納得性☆

 小気味よいアクションストーリーで、作品自体のテンポはマズマズ良い。またいわゆるバディものとしてクリスとフィンの関係性を中心に、各キャラクターも確立していて人間ドラマとしてまずまず見応えがある。作品自体はまだ完全に完結はしていないが、そこはSeason2で解決?を期待したいところ。

 

冰剣の魔術師が世界を統べる

総合評価 D
キャラの魅力☆ ストーリー性☆ 納得性☆

 お約束、陳腐の極みという印象。結局は天然タラシの無双主人公を取り巻く美少女ワラワラハーレムもので終わってしまった。またギャグとシリアスの切り替えも乱雑すぎ。おかげで主人公が支離滅裂なキャラになってしまっている。

 

大雪海のカイナ

総合評価 B
キャラの魅力☆☆ ストーリー性☆☆☆ 納得性☆

 大災厄後の世界を舞台にした活劇で、未来少年コナン的伝統作品テイストがある。キャラもよく動き、冒険活劇としては成功していたが、結局は敵のキ印提督を倒して終わりというやや安直で呆気ないオチだったのがやや脱力。また最後が尻切れトンボでもう少しエピローグ的な展開が欲しかった。全11話と通常より1話短いが、本来ならそこに最後のもう1話を持ってきたら、作品の評価がもう1ランク向上したはずで、それが一番残念。

 

異世界おじさん

総合評価 C
キャラの魅力☆☆☆ ストーリー性☆ 納得性☆

 製作状況の問題から、一昨期の作品が、昨期にワープしたと思ったら、最終話は今期にまでワープしてしまったという、昨今の劣悪なるアニメ製作状況にもろに翻弄された作品。作品自体は劣悪な製作状況にしてはまずまずの内容であった。とは言うものの、おじさんの突き抜けたキャラ以外には特に強烈な魅力は薄かったところがある。

 

 

中途脱落作品

最強陰陽師の異世界転生記 8話で脱落

 転生主人公もので、元々無双だったキャラが転生するというこれまた最近多いパターン。主人公が魔法使いでなく陰陽師というのが独自性と言えるが、それが作中で全く生きていない無駄設定になっており、それが消えると単なるハーレム無双物語となってしまって、途中でしんどくなった。

 

ノケモノたちの夜 3話で脱落

 魔族と少女の交流ものという少女漫画では結構ありがちな内容。それなりの面白味は感じるのだが、あまりに目的地が見えないストーリーが途中でしんどくなり、作品数がやたらに多い今期の中では埋もれてしまった。

 

スパイ教室 4話で脱落

 スパイアクションものとしては空振り、心理劇としては中途半端。シナリオに精緻さが欠けて相互矛盾していたりなど、結局は単なる美少女ワラワラものの域を出ていないと判断。

 

もののがたり 3話で脱落

 主人公や周辺キャラなどは比較的よく描けているものの、昔からよくあるお約束パターンの作品で、人間ドラマなどにもそれほど深いものは感じなかったことから、作品数が異常に多い今期の中ではフォローする気にならず。

 

TRIGUN STAMPEDE 3話で脱落

 スットボケテいるが明らかに裏があるという主人公のキャラなど、独得の魅力は感じるのであるが、残念ながらそれが私の好みと合致しているかと言えばしんどい。作品数の多い今期の中で最後までフォローするモチベーションが保てず。

 

あやかしトライアングル 1話で脱落

 やたら「あざとい」印象の作品で、私の好みとは全く合致しないことが明確だったので、早々に脱落。

 史上空前の不作だった昨期と一転して、今期はとにかく作品数は異常に多い。もっとも製作状況の苦しさは相変わらずのようで、三期放浪した挙げ句にようやく今期で完結した「異世界おじさん」のような極端な例があるが、「魔王学院の不適合者II」のように途中で放送が停止してしまった作品も複数(私がチェックしていない作品を含めて)ある。作品数の異常な多さは中途脱落作の多さにつながっており、「ノケモノ」「もののがたり」「TRIGUN」などは今期でなかったら最後までフォローした可能性のある作品。

 

 

総評

 「史上空前の不作」だった昨期から一転して、今期は「史上空前の多作」となった。ただこれが名作続出だったら嬉しいところだったが、実際は「可もなく不可もなくだが、大して面白くもなく、独自性は全くなく」という作品の羅列であって、内容的にはA評価作が皆無という極めてお寂しい状況である。

 作品数は増えたものの、相変わらず大半はなろう系量産作品ばかりで、こちらはいよいよ持ってオワコン感が強まるのみ。非なろう系作品で期待できそうだった「アルスの巨獣」や「大雪海のカイナ」が共に最後のまとめでやや点数を落としているのが残念なところ。さらに今期の本命と言えた「ダンまち」がかなりグダグダとした展開のために、今期単独では評価を落とさざるを得なくなったことが全体的な低調感に拍車をかけている。

 一方で当初はほぼ期待していなかったのに、予想外に伸びてきたのが「HIGH CARD」と「Buddy Daddies」。小気味よい展開に人間ドラマを絡めた作品で、主人公を中心とした人物像をよく描けていたのが特徴。共に決して全く新しいタイプの作品ではないが、アニメ界がなろう系一辺倒である中で、こういう作品がある意味で今後の新たな方向性を示しているような気もする。

 それにしてもここまでテンプレ通りの、そのうちにAIでも書けそうな作品ばかり並ぶと、一体日本のクリエイターは何やってるんだという疑問ばかりが湧き上がってしまう。1度「転生」「無双」「ざまぁ系」「悪役令嬢」「異世界スキル」「辺境スローライフ」などのお約束を完全に封印した上で新作を募集しないと、なろうどころか日本のアニメ界自体が終わりかねない気がしてならない。

(2023.4.7補足)

 「大雪海のカイナ」について、その後の調査の結果、10月に映画が公開されるということが判明しました(私の事前調査不足でした)。内容はどうやら大軌道樹を目指す冒険と、それに絡んでこの世界の秘密が明らかになっていくというものと予想されます。

 これでテレビシリーズと劇場版を合わせると作品がスッキリ完結ということで、テレビシリーズのどうも尻切れトンボな決着も説明がつくのですが・・・それはそれで「テレビシリーズは映画のプロローグかよ、ふざけるな!」ということも言えるわけでもあります。正直なところ、それなら最初から2クールで大作として作って欲しいというのが本音ですが、昨今はそれも許されない大人の事情があるのでしょう。まあ私は本作は今期の中では比較的出来の良い方という評価は同じなので、今更評価を変更はしませんが。

 

 

2023年春期作品評価

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2022年秋期作品評価

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