司祭から敵の親玉との経緯を聞かされるユージ
相も変わらずの全く盛り上がりを欠くまま、ストーリーはラストに向けての佳境を迎えてきました。いかにも怪しげな町に乗り込んだユージは、そこでシュタイル司祭からことの顛末を聞かされると。それによると救済の蒼月はシュタイルが冒険者時代になんちゃってで始めた教団だったが、大きくなる過程で野心家のヴァルターに側近を丸ごと殺害されて教団が乗っ取られ、救済の蒼月は危ないジハード教団になってしまったと。で、ヴァルターの目的がハッキリしないが、普通に考えると悪魔召喚して絶対的な力を手に入れるとかそんなところか。
もっとも神と悪魔って相対的なもので、視点が入れ替わると立場が入れ替わるからな。この世界の宗教形態がどうなっているか分からないが、悪魔と言われている側から見たら、今の世界は邪悪な悪魔に支配されている世の中であって、その世の中を破壊して神の意志に基づいた新しい世界を作るって話になる。そしてヴァルターは神の代弁者として地上の絶対権力を得ようとしているって辺りだろうけど。
神は1人に悪魔は無数
一神教の場合は、基本的に自分達の神以外はすべて悪魔だからな。そのために唯一神に対して悪魔が何系統も膨大な数になって「おいおい、それだといくらなんでも神の陣営が分が悪すぎるだろう」って感じる状態になってしまう。キリスト教なんかも元々堕天使であるルシファーという自前の悪魔を持っているにもかかわらず、それ以外に古代バビロニアの悪魔(要は古代バビロニアの神が悪魔にされた)とかその他諸々、自分達が滅ぼした他宗の神をことごとく悪魔にしているので。それに対して多神教はもっと穏健で、取り込んだ他宗の神は至高神の配下にはされるが、神格を失うのではなくて地方長官ぐらいにはしてもらえる。
キリスト教のルシファーの話が出たが、ナンバー2が絶対神に敗北するというパターンは結構多い。まあ実際に昔からナンバー2の反乱ってのは比較的起こりやすかったからだろう。この反乱が成功したら、暴虐な独裁者を追放して神の国が出来たって話になるが、敗北した場合には堕天したというような物語になる。ちなみに仏教でも教団乗っ取りを目論んで仏陀を暗殺しようとしたというデーヴァダッタ(ダイバダッタ)という存在がいる。なぜか日本ではインドで修行して超能力を得た七色の戦士の師匠ってことになっているが。
無双のユージ様が邪神諸共チャッチャと片付けて終了ですかね
シュタイルはユージにお告げについて話したが、あえてすべては話さなかった模様。「お告げを成就させるために」という言い方をしていたが、普通に考えたらお告げの内容は「ユージがヴァルターの野望を阻止するが、シュタイルが犠牲になる」ってもんだろう。シュタイルはヴァルターに相まみえるために弟子と2人で本部に乗り込む。さすがに元々荒くれ者だったというだけあって、ただの司祭でなくてなかなかの格闘術をお持ちのようで(元武闘家か?)。しかしお約束通りに弟子が敵のスパイで窮地に陥るという展開。そこにフラッとユージが「あのー、ちょっと聞きたいことがあったんだけど」とKY乱入するという。この緊張感も危機感もないところが、この作品の盛り上がらない一因でもあるんだよな。どうせこの後もヴァルターが半ば復活させかけた邪神を、無双のユージ様がチャッチャと倒して「お告げの通り」って展開なのが読めるわな。
ちなみにこの作品が盛り上がらない原因は多々あるが、一つはあまりに感情が薄すぎる上にそもそも行動原理が存在しない主人公。さらにはテイムしたスライムに魔法転送するばかりで主人公は司令室から動かない超リモート戦闘にもあるんだな。さすがに最後ぐらいは主人公も肉体晒して戦うんだろうか。彼が肉弾戦やったのって、最初のドラゴン戦ぐらいだから。後はお気楽お手軽なリモート戦闘ばかりで。
なおこの主人公、元々過労死したブラック企業の社畜って設定があったはずだが、そんな設定、当の昔に地平の彼方にぶっ飛んでしまっていて完全にどうでも良くなってるんだよな。昔は転生ものと言えば、中世的な異世界に転生した主人公が現代知識と転生ボーナスのおかげで無双するってパターンだったが、そもそもニートや普通の社畜が中世に転生しても無双できるだけの知識や経験がないだろうという当たり前の問題に突き当たり、最近は転生ボーナスだけで無双するか、もしくは某薬剤師のように転生しなくても無双できたスペックの主人公かって話が中心になっている。にしてもそういうパターンの行き詰まり見ても、なろう系は当の昔にオワコンなのにいつまで引っ張るのって感が強くなるばかり。
次話はこちら
前話はこちら