白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

現実主義勇者の王国再建記 第24話「家郷に離別して歳月多し」第25話「相手を知り、己を知れば夫婦仲も危うからず」第26話「前に古人を見ず、後に来者を見ず」

文系勇者の物語完結

 文系勇者の内政物語ですが、ようやく大団円です。と言っても終盤になってくるにつれ説教臭さが鼻持ちならなくなってきたのと、私自身がワクチン副反応で寝込んだ煽りなどから最後はまとめてコメントを。

  
Blu-rayも出るようで

 第24話は内政シリーズの最後。難民問題の解決というある種タイムリーな話題。結局はいつまでも他国の民を庇護し続けると言うのもキツいので、自国の民として同化するか、それを拒むなら退去させるかしか選択肢がなかったという話。確かに自国の民ではないのにいつまでも自国にいるという状況もしんどいですし、当の難民連中も中途半端になります。もっとも同化となってもとかく差別などがつきまといやすいし、生活の糧を得させるのも難しい。で、生活の糧についてはどうもいか焼きで解決させそうな模様。差別の方についてはそもそも王国自体が多民族国家のようなので、余程下手をしなかったら特別な差別は起こりにくそうな土壌がある(何しろ軍の要職に他種族がいるような国家だから)。

 いかにも物語らしいご都合主義な決着なので、現実にこのように上手くは行かないだろうが、その辺りはあくまで物語って話。で、故郷に何が何でも帰る派を引き連れて去ったジルコマは反魔族ゲリラを率いて故郷奪還のために戦うってか。

 ちなみにサブタイトルの「家郷に離別して歳月多し」ってのは唐代に活躍した宰相の賀知章の漢詩の冒頭だそうな。意味はそのまんま「故郷を離れて長年経った」ということしかない。引退して50年ぶりに故郷に帰ることになった心境を歌ったものらしい。

 第25話は総勢4人に増えたソーマ奥方軍団に対して、人生経験豊富なエクセル大伯母様が夫婦円満のコツについて、どうやら夜のテクニックまで含めてみっちり指導するという与太話。内容的にはさして意味がなく、締めを前にしての各キャラのまとめという意味もある内容。

 

 

最後の最後で明かされたオチは「死に戻り?」

 で、最終第26話がこの作品自体の種明かしとなるわけだが、あの先王夫妻は何やら大きな秘密を抱えていそうだということは匂わせていたが、要はこの物語は先王妃様の死に戻り物語だったというオチか。

 彼女は未来の記憶を過去に引き継ぐという能力を持っていて、ある意味でそれは死に戻りに近い。そしてどうやっても滅ぶ運命にあった王国を存続させるためにいろいろな男性を夫に選んではやり直しをしていたが、どんな強い男や賢い男を選んでもその度に失敗をしていた。そんな中で一番王国を永らえたのは、善良ではあるが気弱で平凡そのものの先王アルベルトであったと。しかしそのアルベルトでも最終的には亡国の悲劇を避けることが出来なかった。

 しかしその世界において、ソーマを召喚したこととリーシアが生まれたことに希望が見えた。ソーマが宰相となることで王国は一部立て直り、それが王国の運命を永らえたのだが、結局は既得権益を侵されることに反発する腐敗貴族連中の存在と、それを抑えきれなかったアルベルトの弱さが亡国につながった。だから妻からその事実を聞いたアルベルトは、今回は宰相などと言う中途半端な立場ではなく、スッパリとソーマに王位を譲り、またその後ろ盾になるようにリーシアと婚約させたと。まあ前の世界でもリーシアはソーマに惹かれて、最終的には彼のために命を懸けたようだから、ここでリーシアをソーマに引っ付けることは父親としても全く抵抗が無かったということだろう。そして腹心のゲオルグにはすべてを明かし、亡国の最大の理由となる腐敗貴族を一掃する策をゲオルクと共に実行したと。

 

 

実は鍵はリーシアの存在だった

 結局は鍵となったのはリーシアの誕生とゲオルクの忠誠か。リーシアは王妃の能力及び行動力と、アルベルトの善良さを合わせて引いたような逸材だったし、ゲオルクが裏で動いたおかげでこの世界でもソーマの最大の問題となる可能性が高かった腐敗貴族の問題が解決した。これがなかったら、この世界でもやっぱり同じ結論になった可能性が高い。またソーマが王として自由に動けたおかげで優秀な人材を獲得できたことが極めて大きい。宰相のサクヤの存在は大きいし、地味に活躍しているのがポンチョ、そしてジュナのおかげでエクセルが早々とソーマ派になってたし。ちなみにサブタイトルの「前に古人を見ず、後に来者を見ず」は科挙に合格して官吏となった陳子昂が、契丹討伐戦に参謀として酸化したものの、献策が全く取り上げられないことを嘆いた漢詩だそうな(アスターテ会戦でのヤン・ウェンリー状態である)。要は前にそれでソーマを見殺しにしたアルベルトが、今度はそうならないように動いたと。

 というわけで最後に大辻褄合わせをしてきたわけですが、まあこれって今までかなりご都合主義に見えていた部分を、最初からそうだったんですと言い訳したようにも聞こえなくもない。まあとりあえず作品としては無難な内容だったとは思うのだが、やっぱり無難に過ぎて盛り上がりに欠けるのがこの作品の最大の難。今期も前半の外交が絡む展開はまずまず盛り上がったのだが、後半になって内政一本になると話の盛り上がりに欠けて説教臭さだけが増すという結果に。作品次第がアイディア倒れの感はなきにしもあらず。

 

 

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