プラチナ世代を犠牲にして得たリア充生活
ああ、やっぱりあの貫之が離脱してしまった後の未来か。だけど恭也としてはそこそこの会社に就職してそこそこのポジションを得て、さらには嫁さんと可愛い娘がいてというそれなりに幸せなリア充になっている。最初のプー太郎になってしまっていた状態よりははるかに良くなっているのだが、これは明らかに恭也にとっては満たされない、そして何よりも申し訳ない未来。
結局は恭也はプラチナ世代の才能と未来をつぶして、その代わりに自分がそこそこの成功を収めたという形になってしまっている。こっちの世界でもいきなりやって来て何も分からないまま仕事を出来ている時点で分かるように、恭也ってかなり有能なんですよね。ただしクリエイターとしてでなくて裏方として。恭也はプラチナ世代の連中を支援しながら自分も一緒に成功していく絵を描いていたんだが、結果としてやっていたことは、彼等に自分の能力を見せつけることで彼等の自信を打ち砕き、さらにはビジネス優先することで彼等の作家性をねじ曲げて方向性を見失わせることだったと言うわけ。恭也にしたら全く悪気がなく行っていたことなので、こういう結果を見せつけられたことで今更それを思い知ったことになってしまって、これはかなり残酷。
河瀬川にしても、元々はもっと大手の部長になっていたようだから、恭也の影響を受けてしまったのだろう。恭也を見ることで絶対的な自分に対する自信に少し揺らぎがでたのか、もしくは恭也がこの会社を選んだから彼女もそこに来たという可能性もある。どうも恭也はシノアキと結婚しているのに、河瀬川の気持ちにやや微妙なところがあるような雰囲気があったから。もっとも彼女自身がそれを自覚しているかも微妙だけど。最初からこの二人の関係って微妙なんだな。どうも恭也は河瀬川に対してだけは最初から男女的な意識抜きで純粋にアドバイザーとして相談しているから。それに対して河瀬川の方はこれまたほぼ無自覚に苛立ちを感じている節もある。
結局はもう一度やり直しするんでしょうね
恭也が「プラチナ世代が結果として犠牲になってしまったけど、自分はそれなりに人生やり直し出来てハッピーか」と考えるようならこれで終わりだが、当然そんな考え方をするような奴ではないし、さすがにこの作品の作者がまさかそんなディストピア展開するとも思えないし、結局はもう一度のやり直しになるんでしょうね。とりあえずあの続きに戻って、何とかして貫之の挫折を防ぐという。そして「さあこれでもう一度仕切り直しだ」ってところで終わりかな。
今時の「ざまあ系作品」なんかだったら、むしろ恭也がプラチナ世代にあごでこき使われた挙げ句に散々な目にあった話にして、過去に戻って学校時代からやり直した結果、自分を散々馬鹿にしたプラチナ世代が全員消滅で「ざまあ」って話にするんだろうが。元よりこの作者はそんなものを目指しているわけもなければ、視聴者もそんなものを期待しているわけではないし。
最近のラノベ系作者って、とにかく人間を知らない、社会について分かっていないって輩が少なくないんだが、やはり自身が創作をしているだけにクリエイターの人間については分かっているようですね。本作なんて、クリエイターの感情が分かる人間でなかったら「なんでそんなことになるの?」ってところがありますね。とにかく扱いにくいところがあるのがクリエイターって奴ですから。まあだから昔から「人格円満で問題のない常識的人間ってクリエイターはほとんどいない」なんて陰口たたかれるわけですが。
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