ゲーム制作は成功したものの・・・
あーあ、やっちゃった。恭也の奮闘でゲームは何とかギリギリで納期内に完成させられ、収益を上げることに成功したが、結果として貫之が自信を失ってしまって、学校をやめることを宣言してしまう。貫之はあまりに出来すぎる恭也に対して、自分の劣っている部分を見せつけられたような気がして挫折してしまった。恭也は社会人経験があるからこそ、何が何でも「納期」を死守することが重要であることを身に染みて知っていて、それだからこそそれを最優先にしてプロットにまで介入したのだが、それは同時に貫之に対しては「お前のやり方じゃ社会に通用しない」と言っていたことに等しくなった。恭也は自覚してなかったようだが、貫之にしたら「お前は能力が不足している」とずっと突きつけられていたに等しい。しかもそれが社会人先輩で地位や実績で明らかに自分よりも上の者から突きつけられるならともかく、同じ学校に通っている同級生からだとなるとキツいものがある。
この手のクリエイターって、やっぱり「俺は天才、俺は一番」って意識がどこかにないと続けていけない。もっとも実力不相応にそれを持ってしまっている場合は、完全にそれを打ち砕かれて別の道に行った方が当人の人生的には正解なんだが、貫之の場合は実は十分な才能があったにもかかわらず、そのプライドに疑問を感じることになってしまった。これってモチベーション大幅ダウンになるからな。今回のゲーム制作では、貫之が一番それまでの自分のやり方にダメ出しされていたから危なかったんだが、やっぱりこたえたか。最終的には恭也がプロットにまで口出ししたわけだから、それって「お前のストーリー立てじゃダメだ」って言われたのと同じなので致命的です。それ以前にも文体のことにも口出しされていたし。これが同級生相手で、しかも結果としてそれにしたがったら成功するという有無も言わせぬ状況では。相手が圧倒的に上位者で、節を曲げてでも従わなければいけなかったとかなら、まだ貫之も「これも処世には必要」と割り切れたでしょうが。この辺りの感覚、やっぱり原作が小説と言うことで、原作者には分かるんだろうな。
以下ジジイの昔語り与太話です
ここから少し私の過去の話になるので、ウザいと思った方は例によってのジジイの与太話とパスしてください(笑)。まあ私は貫之とは才能が比較にならないが、一応これでも過去に本を一冊執筆した経験があるので、その時に編集さんといろいろなやりとりがありましたが、その過程でも個人的にはいろいろと思うところがありましたよ。文体を含めていろいろと指摘されるので、相手の方がこの世界でも経験があって分かっているはずだからと指示に従いましたが、それに合わせるのは苦痛だったところもあったりしましたよ。それにあまりいろいろ指摘されたら自分の限界を感じて「この人が自分で書いた方が良いんじゃないか」と思って自信喪失しかけたりとか。結果として何とか出版にまでこぎ着けましたが、散々自分の限界を感じた上に、それまで「自分は文章に関しては結構才能がある」と信じていたのが、実はかなり根拠のない自信だったってことまで思い知った。まあ私の場合はそのおかげで、その後の人生誤らなかったのかもしれないが(と言いつつも、実は大きな可能性を自ら逃したのではという根拠のない後悔もある程度ある)。
プラチナ世代が挫折した後の世界なんだろうな
結局はこれで貫之は完全に自信を失って自分の将来に見切りを付けてしまったってことですね。さらにあまり表に出てませんでしたがシノアキもかなり危ない。実は恭也は無意識にシノアキにも結構ダメ出ししている。シノアキはああいう性格だからあまりハッキリとは言ってなかったが、それでも「これで良かったのかな」という言葉は出ていた。シノアキも貫之と同様に自分の能力に限界感じた可能性がある。それまでは「好きだから」ということでイラストを描いていたが「やっぱり好きだからだけだと社会的に通用しないな」と感じた可能性がある。
で、貫之が実はプラチナ世代の一人の川越京一だったということが分かって、恭也は「自分が彼の将来をつぶしてしまった」と強烈な罪の意識に駆られる。貫之は恭也に「何回人生をすればそんななれるんだよ」と思ったというようなことを言っていたが、恭也は「俺は一回人生をやったんだ!」と言いたかったろうな。実際にそれがなかったら恭也はこんなに有能にはなってなかったろう。恭也は彼等の手助けをするつもりでいたが、どこかで自分の果たせなかった夢を実現する方がメインになっていて、そのことによって他の面々の自信を砕いてしまったところがある。その後で恭也がまたタイムスリップしたようだが、それはその後の世界の模様。シノアキが恭也の嫁になっていたようだが、多分シノアキも普通の主婦になってあの世界から離れてるんだろうな。恭也は何の仕事してるかは不明だが。多分この世界で順調に行っているとしたら河瀬川ぐらいだろう(奈々子も成功している可能性はあるが)。で、その一種のディストピアからまた恭也はもう一度やり直すって展開か。
次話はこちら
前話はこちら