白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

SSSS.DYNAZENON 第12話「託されたものって、なに?」

まあ予想の範囲内の大団円でしょう

 大体想定通りに、ほとんど説明なしに綺麗にオチをつけてしまいました。まあこの作品の場合、ダイナゼノンとは一体何だったんだとか、ガウマ達の存在は何なんだとか、ナイト達はどういう存在でどこから来てどこに行くのかなんてことどうでも良いことなんでしょう。まあこれはこういう世界の物語であり、その世界観云々なんてのはご自由にお考えくださいってとこなんだろう。まあこの作品の場合、それもありだろう。

     
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 そもそも理詰めで考えていったら、不自然なところだらけなんです。あれだけ怪獣が頻繁に現れて騒動になっているにもかかわらず、自衛隊はおろか警察さえ特に動いている様子はない。それどころか通常ならニュースなんかは怪獣一色となり、そんな状況下で日常生活が普通に動いて学校が通常行事やってるなんてことは考えられないわけですが、その辺は異常な感覚がつきまとっていた。だから結局はこの世界が我々のいる世界を想定していないって可能性もあり得る。まあ単純に作り手がその辺りのことまで考えてないって可能性もあるが。

 

つまりは各人が「一歩前に踏み出す」ための話だった

 まあだけどそんなことはこの作品の場合は二の次だったんだろうな。結局は主眼は蓬や南さんやニート君のような、どことなく今の世界からはみ出しているように感じていた連中が、ガウマって言う変な奴に出会うことによってそれぞれに関わりを持って、結果として現状から脱出していくという話。まあ今日的な話ではある。

 その中でちせだけは結局は現状維持になったようだが、今までは学校に適応出来なくて後ろ向きに不登校やっている感覚がどこかにあったんだが、そこから「別に学校なんてどうでも良い」と信念を持った不登校(笑)になったってところだろう。

     
ちせは一応はあれでも「進化」なんでしょう

 蓬は家庭内での違和感を抱えていたのだが、結局は「母親が再婚するかも」って状況に対応することになったようです。まあ相手が悪い人ではないようなので、蓬も抵抗ってよりも最初から違和感程度のものしか持ってなかったようですので、元々からこの問題は大きくは取り上げていないです。蓬も南さんと引っ付いたことでリア充入りですから、彼にとっては望ましいことでしょう。

南さんとの件も、何とか綺麗に決着が付きました

 

 もっと鬱屈していたのが南さんですが、今回のドタバタで姉のことに対する引っかかりが解消され、今までクラスの中でも浮いている感があったのが、蓬との関わりで不承不承でもクラスに溶け込もうとする気持ちになったようです。彼女の親友が「変わった」と言ってましたが、そういうことでしょう。もっとも私は特に彼女が変わったような印象は受けませんでしたが(笑)。

 

「かけがえのない不自由を手に入れていく」

 最後に蓬がシズムとのやりとりで「かけがえのない不自由を手に入れていく」ということを言ってましたが、まあこれがこの作品のテーマと言えばテーマでしょう。日常生活で他者と関わりを持って生きていくのは不自由ではあるが、それはかけがえのないものでもあると。それを捨て去って自由を選ぶというのが怪獣優生思想であったが、結局は蓬はそれを選ばなかった。まあ彼の場合、そこまで日常に対しての抵抗は強かったわけでないし(違和感のレベルだった)、今回の件でリア充にまでなったんだからそりゃそうでしょう(笑)。

     
とりあえずダイナゼノンも最後に大活躍しました

 ある意味で一番劇的に変わったのはニート君こと暦君。最後にナイトに「お前誰だ?」って言われていたが、確かにそりゃそうだ。私も「何か一人だけオッサンが混ざってるぞ」と思いましたから。普通の格好をすれば予想以上にオッサンだったというオチ。まあ同級生が稲本さんだということを考えると、確かに結構年齢がいっているのは間違いないが。

 で、暦君はどうも稲本さんとのゴタゴタもあってニート一直線だったのが、その件について彼なりに決着をつけて前向きに生きることにしたようです。もっとも面接失敗25回っていう厳しい社会の洗礼は受けたようですが(現実問題として、職歴空白のニートがいきなり就職活動してもまともには難しいのは現実です)。常に非現実感がつきまとっていたこの作品にしては、こういったところだけは妙にリアリティがある。何かこの作品の作者、非常に歪んだ人生歩んできたんではないかと心配になったりするが(笑)。まあ最近のラノベ原作の作品を見てたら、作者が決定的なまでに社会のことと人間のことを知らないってのを痛感するような作品も少なくないが(笑)。まあ別に本作の場合はそういうわけでもないだろう。

 そして現実で悪戦苦闘した暦君は、最終的にはコネ就職ですか。まあ稲本さんの昔なじみってだけでなく、実際の旦那の命を助けてますから、まあその功績で採用ってとこでしょう。まあ世の中、この程度の「汚い手(笑)」はありでしょう。もっともここに就職出来たというのが、彼が過去を完全に決着つけたという象徴なんですが。「元カノでなくて友達」っていうあえて割り切った台詞は、彼の心の中での決着を意味してます。

 

実は一番縛られていたのは怪獣優生思想の面々

 結局はガウマ達は何のためにこの世界に来たのかだが、そんなことはどうでも良いってことなんでしょうね。結果としてガウマは蓬たちが前向きになれることに貢献したわけで、ガウマ自身もそのことに意義を見出したみたいなので、これがガウマをも救ったことになるんでしょう。ガウマが本当にそのために呼び出されたというわけでなく、ガウマ自身がそれで自分の存在意義があったと感じたことの方が重要。

結局は彼女たちだけが最後まで救われなかった感じがします

 怪獣優生思想の面々は最終的には怪獣と運命を共にしたわけですが、結局は彼らもいわゆる「通常」の生活なんてのもしてみたが、結局は彼らにとっては怪獣にしか自身の存在意義を見出せなくて、結果的にはそれと運命を共にした。シズムは「しばられない自由」というような言い方をしてたが、実際は彼らこそが一番縛られているっていう矛盾でしょう。「自由である」ということに固執した挙げ句に、結果として「それって逆に縛られてるのでは?」って話になったのだが、まあシズムはそれに気づいていなかったし、蓬は感覚的にどことなく気づいていたってところか。

 

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