白鷺館アニメ棟

放送中のアニメ作品について、アニメファン歴50年以上という鷺が軽いツッコミを交えて与太話

天地創造デザイン部 第10話「案件10」

生とは何か死とは何かという壮大なテーマです

 今回は生物の基本である老化と死について考察した回。人間は老化と死を全力で回避しようとしますが、それが果たして生物として正しいのか。

     
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病気にもならなければ老化もしない完全生物

 最初は下田君が動物の世界を擬人化した社会を経験。何やら高度に社会的な動物で、個よりも群れを優先する社会であることから、ハチかシロアリっぽいなと感じてたのだが、どうもそうではなさうだと思ったら、ハダカデバネズミだったというオチです。

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ハダカデバネズミ

 ハダカデバネズミはそのビジュアルがインパクトありますが、ほとんど病気にならない上に老化耐性もあるとのことで医学的に非常に注目されている動物であります。もしかしたら老化対策の切り札になるかもと考えられている。もっとも本当に老化を防ぐことが生物して正しいのかという問題は存在しており、それは後半とも関連するんですが。ちなみにハダカデバネズミは以前にサイエンスZEROで扱っていた記憶があるのですが、残念ながら私の教ドキュのバックナンバーには含まれてませんね(笑)

 

 ハダカデバネズミの社会は女王を中心とした血縁社会であり、群れ全体のために個は奉仕するという社会です。人間の中にもこういう社会を理想と考える輩はいて、それが全体主義につながります。しかし実のところはそういう奴が考えている社会はインチキであって、個が群れ全体に奉仕するのでなく、人類全体を自分自身にのみ奉仕させたいと考えているだけです。その証拠にそういう社会を唱える奴で、自分が一兵隊で良いという奴はまずいません。常に自分が王の立場に座ることを想定してます。そして群れ全体のためには場合によっては王自らも犠牲になる必要があることもあるのですが、そういう輩はそういう事態は全く想定してません。

 なおこういう社会は安定性はありますが、環境の変化にはあまり強くありません。完璧な社会という言い方をしてましたが、完璧だが発展性のない社会でもあります。番組の後半にも出て来たように遺伝的に近すぎるために特定の病気で全滅って可能性があるからです。ハダカデバネズミが生き残れたのは、その異常とも言えるような耐病性によってであり、どちらかといえばそちらの方が胆でしょう。低酸素環境に強いという特性も持っており、つまは活動性が低いということでもあり、それがガンになりにくいということにもつながっているような気はします。ガンの原因でもある活性酸素は生体活動の結果として必然的に生成するものなので、活動量が少なければ必然的に生成も減ります。また代謝が低ければガンの成長も遅い。だから人間でも高齢者のガンほど進行が遅い。

 

若返りは結局は下等生物の専売特許か

 後半は若返る生物とのことですが、若返るというのはそれはそれで問題があるという話が出ます。つまりは老化しない生物ということになりますが、そうなる世代交代が起こらないので多様性が獲得できず、特定のウイルスで全滅って危機があります。そこで多くの種では、長く生きた個体は老化を経て死に、世代交代することで多様性を増やしていくことになります。実際に多様性を増すために人間でも「思春期になった女性は自分と遺伝型が近い男性の体臭を不快に感じる」なんて話がヒューマニエンスでもありました。これって思春期になった娘にとって父親が臭い原因ではないかって切なくなる話でもありますが。

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 それと若返るといっても、細胞の情報を一旦リセットして再度やり直しというのは、細胞が高度に分化して高等生物では難しいだろうとのこと。これはごもっとも、番組では土屋さんが馬に再生をかけてみたが、最終的にはクラゲのような生物にしか再生せず、それならクラゲに若返りのギミックを追加したらそれで良いのではというのが結論になっていた。

 

 クラゲってのは確かに下等生物ならではというか、わけの分からん生涯を送ります。植物のような感じになったこと思ったら、そこからにょきにょきと枝が出て来て、その先に節が出来たと思ったらクラゲが分離するとか、人間では想像のつかないことをしでかしてくれるスーパー生物です。

         
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 結局は生物単体の性能をチューニングしていったら、個体としてのタフさは失われていくということだろうか。高等生物はフェラーリの車のようなもので、高性能なんだがとにかく故障に弱く、一つ間違うとエンジンが火を吹いてお釈迦。さらに言えば燃費も悪い。それに比べると下等生物は軽トラのようなものか、とにかくタフであって小回りも利く。そして思いがけない場所にまで進出していくと。サーキットという環境が整っていればフェラーリは圧倒的に強いが、もしサーキットがなくなって田舎のオフロードを走る羽目になったらフェラーリはすべて絶滅するという運命。

 

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