憂国のモリアーティ 07「ノアティック号事件 第二幕」

あからさまに不自然な状況に気付いた「鋭い」ホームズ

　さて計画通りに衆人環視の元にあのクズ伯爵様が殺人を実行している「現場」をさらすことで、「一体貴族はどうなってるんだ」という貴族たちに対する不信感を社会に植え付けることに成功したモリアーティ一派でした。普通にあのクズ伯爵様を始末するのは簡単だが、それでは彼の悪行が闇に葬られて終わりですから。

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　しかし誰かが裏で糸を引いているということに気付いていた人間が一人だけいた。それがシャーロック・ホームズ。しかもご丁寧に彼はモリアーティに「なんかこの事件変ですよ」ってことをわざわざ誇示していた。かなり目立ちたがりの男である。そしてモリアーティの方は「ん、こいつ鋭い」と彼を警戒することにという展開ですか。

　だけど・・・こんな不自然な展開、正直なところホームズでなくても「何か陰謀があった」と考えるのが通常だと思うんですが。伯爵様が目の色を変えて被害者をめった刺しにしている現場が舞台にせりあがってくるなんて、普通に偶然とかで起こる代物でないのは考えれば分かりますし、別に彼が殺人の現場を聴衆に誇示したかったわけではないのはその後の展開で分かりますし。

　それにホームズが被害者がもっと早く死んでいたってことに気づいていて、「こいつ、法医学の知識もあるのか」となってましたが、そもそも生きている人間をめった刺しにするのと、死体をめった刺しにするのは出血量などがまるで違うでしょうから、おそらく一目瞭然だと思います。なぜかこの作品は相手を刺殺しても返り血をほとんど浴びないというパターンが多いんですが、本来はもっと血が飛び散るはずというもの。

 名探偵コナンが登場しそうな計画でしたね・・・

　もともと今回の計画自体があり得ないぐらいに杜撰と言えば杜撰ですが。あのクズ伯爵が被害者をめった刺しにして、しかもその間にセリが作動しているのに気づかないなんてのが前提でしたから。彼が被害者の脈を取って「なんだ、やっぱり死んでるじゃないか」という反応だったら、こうあからさまに「伯爵が殺人をした」という状況にならなかった可能性大。しかも彼が発覚後に開き直って殺人を誇示するなんて大馬鹿な行動をしたから、それが確定しただけであって。正直なところ名探偵コナンの殺人トリック並みに無理があるような気がする。

　もっともモリアーティがあのクズ伯爵の性格や行動パターンを分析した結果、そう振る舞うだろうと確信してそれに誘導したってことにするんでしょうけど。まあそれにしてもやはりシチュエーションに無理があるな。まあこの作品はミステリーでもサスペンスでもないから、そのあたりに厳密性は求めないんでしょうけど。

　それにしてもあのクズ伯爵、以前から「人間狩りをしている」という噂はあったのかいな。確かにそれにも関わらず今まで放置されていたというこの社会のシステムに根本的問題があるのは間違いない。

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